HaateKaateと、今回のアルバムアートワークについてのやりとりを始めたのは一年前の春。出来たてほやほやの「聖者の行進」のプリミックスを送り、次のアルバムに対して思い描いている構想やテーマなどを彼女に話しました。 今回はアルバムのテーマである「ヴァニタス」をコンセプトに、あなたの思うままに描いてください、というのがCojokからのお願いでした。そうして送られてきたのが今回のアートワーク。 物事の終わり、そして始まり。絶望の向こう側にある希望を預言するような眩しい光。HaateKaateはそんな複雑な「ヴァニタス」を見事にこの一枚の中に集約し、今とこれからのCojokを示唆するかのような作品に仕上げてくれました。彼女の感受性とアイデア、センスの光る作品です。 以下はこの絵の解説です。この絵が何を現したものなのかを詳しく知りたい、という方はどうぞお読みください。

静謐な部屋の真ん中にベッドがあり、そこに横たわる一人の裸婦。張り出した腹部からは彼女が妊娠中であることがわかります。

窓の外は明るく、一見すると、美しい白木のベッドで妊婦がまどろみながら昼寝をしている光景のように思われるこの絵、しかしよくよく見ると部屋の窓は閉ざされているにも関わらず、窓の外からはあたかも清々しい風が吹き込んでいるかのようにカーテンがはためいており、その不可解な描写は、この絵を怪し気で謎めいた趣へと変えています。

ベッドの下には積み上げられた本と、火が消えて煙を上げる一本の蝋燭。静物画において「ヴァニタス(虚無)」という概念は、「栄枯盛衰」「人生は有限」という教訓を、様々なモチーフを配置して無言で語らせたもので、本は英知や記憶、蝋燭は有限のものーーー特に時間や命を示すものとして描かれるモチーフです。 妊婦の足元に無造作に積み上がった書物は、彼女が歩み、積み重ねてきた人生の経験や過去の思い出を意味するものであり、蝋燭の火が今しがた消えたという描写は、命の火が尽きたことを暗示する。つまり、ベッドの上の妊婦は眠っているのではなく、死んでいるのではないか、という疑惑が浮かび上がるわけです。

そのような解釈を踏まえて改めてこの部屋を眺めてみると、ベッドを取り囲む白い木の枝は、美しく繊細なイメージから、まるで白骨化したミイラの指先であるかのような印象に変わって見えます。また、骸骨の手の中に包まれて眠る妊婦は、透明で清らかな衣を纏い、明るい光の差し込む、閉ざされた窓の方へ顔を向けており、それはまるで汚れなき存在が死の淵にありながら、一筋の希望を求めている切なく儚い姿に見えてきますし、妊婦の腹の中に灯った新しい命は、物事の誕生や何かの新しい始まりを予感させ、絶望の果てにやがて訪れる幸福を暗示していることが読み取れるのです。

物事の終わり、そして始まり。絶望の向こう側にある希望を預言するような眩しい光。

HaateKaateはそんな複雑な「ヴァニタス」を見事にこの一枚の中に集約し、今とこれからのCojokを示唆するかのような作品に仕上げてくれました。
HaateKaate
ブルガリア共和国在住の画家・フォトグラファー。
2010年よりCojokの作品全てのアートワークを手掛ける。

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